デッサンに基づく造形

ものを作るには必ず設計図が必要です。車でもカメラでも何でも一番最初の段階としてデザイナーが自分の感性でデッサンを描きます。理想のデッサンが出来上がったらそれをもとに設計図を作ります。そしていよいよ実際のもの作りの工程に入っていきます。しっかりしたデザイン(デッサン)と設計が製品の良し悪しを決定づけるといっても過言ではありません。
工業製品でさえこのような工程があるのですから、美しさを追求する鑑賞品はやはりデッサンをもとに作られなければなりません。

ひな人形はいうまでもなく鑑賞して楽しむことが目的ですから、本来は前述のような工程を経て作られて当然です。ところが実際にはお顔を作る職人と衣裳を仕立てる職人はまったく面識がなく、各々が自分の仕事だけをこなしており、自分の作った顔(衣裳)がどんな衣裳(顔)に組み合わせられるのかまったく知りません。節句人形に携わる人はそれが当然のこととして不思議には感じていないようですが、普通に考えればたいへんおかしなことになっているわけです。

本作品は、絵画や彫刻などの芸術分野を学び身につけた作家が、冠から座台までを含めた造形が正三角形に納まるようにデッサンいたしました。
それをもとに彫刻(粘土)で立体にし、お顔や冠、手、胴などそれぞれの部分を同一工房内の職人が製作、それらを元通りに組み合わせることで、はじめに描いたデッサン通りの理想の形のおひな様に仕上げております。

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